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というか、最初から俺にやらせるつもりで、花を買ってきたのか。
ジト目で見遣るもなんのその。充希はにこりと笑んで、「頼む」と繰り返す。
あー、ハイハイ。やりますよ、やりますとも。喜んでお受け致します。
「そんな、頂いておきながら……悪いです」
「いえ、元はと言えばこちらが持ってきたもんですから。えーと、あ、あの花瓶使ってもいいですか?」
「あ、はい、大丈夫だと思います。初めから置いてあったモノなので」
「じゃあ、失礼して」
俺は栃内から花束を受け取って立ち上がり、窓際に置かれていた白い花瓶を手にした。ベッドを回って、扉横の洗面台へと歩を進める。
洗面台の向かいには、トイレの他にシャワーがついている。そのため、間仕切り用のカーテンがついているが、使われた形跡はない。部屋の色と同じく真っ白なそれは、洗面台側に寄せて纏められていた。
「ところでお嬢さん、"カツ丼"というものを食べたことがあるかい?」
「え? あ、はい。ありますけど…………」
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