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ほんの少しでも彼女の慰めになったのなら、俺も充希を強く責めることは出来ない。
「では、そろそろ行くとしようか。外の生真面目な彼が胃を痛める前に」
椅子から立ち上がった充希を合図に、俺達は扉へと歩を進める。
扉を開く直前、俺は最後にと栃内を見遣り、
「本当に、何でも頼ってください。出来ることは、なんでもさせて頂きますから」
「……本当に、ありがとうございます。……あの、一つ、いいですか?」
「はい、何でしょう?」
「あの、ご迷惑でなければ、明日も来て頂けないでしょうか。その、本当に、少しでいいので。……ずっとここで一人でいると、本当に、退屈で」
これは、願ってもない提案だ。
俺は力強く頷いて、
「そう言って頂けて嬉しいです。明日また、伺わせて頂きますね」
「僕はもとよりそのつもりだったが?」
「それはちょっと図々しいのでは……」
「いいえ! ありがとうございます……。お待ちしていますね」
嬉し気な笑みを浮かべた栃内の白い頬が、期待に薄く色づく。俺達は互いに軽く手を振って、充希と共に部屋を後にした。
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