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扉が閉まる。先を歩く充希を追うようにして、エレベーターホールへと踏み出した刹那。
「……手え抜いてんじゃねえよ」
「!」
咎めるような低い声に、俺は跳ねるようにして振り返った。
声の主は警備員――否、警備員の"服を着た"、特異機動隊の仲間である城戸清だ。
短い髪を収めた警備キャップの下で、鋭利な双眸が俺を突きささんばかりに睨んでいる。
隊員の中でも数少ない"VC"である彼は、見た目こそ二十歳を少し過ぎた程度に見えるが、実際は俺と同い年だし、なんなら同期でもあるのだが……。
入隊時からどうにも俺に対して、あたりが強い。
「……"ソイツ"になんかあったら、責任取らされんのは八釼サンだぞ」
通常の"吸血事件"であれば、俺達が警備として立つことはない。駆り出されるのは主として、よほど"事件性"の高い場合だ。
今回は"ヴァンパイアキラー"という特例中の特例が絡んでいるのだから、きっと誰か顔見知りがいるだろうとは予測はしていた。
だからこそ、部屋前に立つ清の姿を見ても、ただの"巻き込まれた"相談屋として、知らないフリを貫いたというのに。
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