ブラックメール

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「なあ巧人、今回の彼女は僕を頼ってきそうな気がするんだ。これは今すぐにでも指輪を用意して、永遠の愛を誓いあうべきだと思わないかい?」 「そうですね。無駄になるのを覚悟で用意したいというのなら、今からでも店にご案内しますよ」 「なぜ無駄になると決めつける?」 「少なくとも俺には、貴方のプロポーズは綺麗に流されたように見えました」 「あの時はまだ、僕のことをよく知らなかったからだろう? もう一度チャレンジすればきっと……」 「ほんの数十分で、どの程度の人間性を知れるって言うんですか。……ああ、付きましたよ。ここです」  オフィスビルから個人商店までひしめき合う、新宿七丁目。大通りから少し入った路地にある、四階建ての雑居ビルを見上げて俺は到着を告げた。  いかにもギリギリ経営の個人商売らしく、一階上に付けた青色のアクリル看板は薄汚れていて、『"VC専門" 野際相談所』と白抜き文字で書かれている。  俺は一階の中央扉を開錠し、「どうぞ」と入室を促した。
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