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下ろしていたブラインドを上げる。人通りの多い場所ではないが、路地に面したガラスはプライバシー程のため、スモークガラスになっている。
暗がりの部屋に置かれた木製のカウンターとダークブラウンのソファーが、明りを受けてその存在を色濃くした。
「ここが俺の仕事場です。一階はカフェスペースになっていて、普段はカウンターにいることが多いです。事務仕事は主に二階で。相談者の方が来たら、そこのソファーで話を聞くことが多いですが、上にも相談スペースがあります。その辺はケースバイケースですね」
「なるほど、温かみのある素敵な職場じゃないか。三階と四階は?」
「殆ど資料などの荷物置き場ですね。それと、仮眠なんかも。……"部外者"が入ると面倒なんで、一棟借り上げているんです。勿論、俺じゃなくて上がですが」
コーヒーでも淹れましょうか。俺はそう言ってカウンターを回り、コーヒーメーカーに水をセットする。
充希は「ああ、ありがとう」と礼を告げながら、対面の椅子席に「よいしょ」と腰掛けた。
……そういえば、本来の年齢は三十六だったな。
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