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受け皿上にマグカップを置いて、コーヒー豆の入った専用のカプセルをセットしたらボタンを押す。
機体の割には物々しい機械音の後、数秒待てば、本格コーヒーの出来上がりだ。
「どうぞ。味についてのクレームは、製造メーカーにお願いします」
「とんでもない。巧人に淹れてもらったというのに、文句などあるものか。ありがたく頂くよ」
息を吐くように繰り出される状況錯誤の甘言にも、慣れてきた。
特に気に留めることなく自分の分を淹れていると、味わうように一口を飲んだ充希がカップを下ろし、「それで、巧人はどうするんだ?」と唐突に尋ねてきた。
「どう、とは?」
「これから彼女をどうやって守る? キミは"VC"のマリアなのだろう?」
(マリア……救いを与える聖母ってことか)
「そんな良いもんじゃないですよ。俺の任務は、"VC"による新たな事件発生を未然に防ぐための諜報活動、及び対処ですから」
「そう。だからこそ巧人は"VC"を守り、保護する。彼らに生きてほしいから。実際、これまで何人もの"VC"が、キミのお陰で命を繋いできたのだろう? マリアと呼ぶに相応しいと思うがね」
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