ブラックメール

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 真っすぐな断言に、たじろぐ。  言い訳探しのカモフラージュも兼ねて、コーヒーを一口含んだ。  苦い。知った筈の苦味が、喉をざりざりと刺激する。 (……どうにもこの眼は、苦手だ)  純真で、美しいモノだけを映しているかのような、宝石にも似た煌めきを持つ紫。  俺は不快感に耐えかねて、小さく口を開いた。 「……俺は、対処療法なんですよ。この国における"VC"の増加を、食い止めるための」 「……と、いうと?」 「有効な治療薬がない上に、長寿をもたらすウイルス。おまけに驚異的な生命力と治癒力が相まって、そう簡単に死ぬことも出来ない。このあいだ本部で充希さんが言っていた通り、このまま打つ手なしでは、いずれ"VC"の数は"N"を上回ります。この国は、それを"最悪の事態"としているんです」 「……"最悪の事態"、か」 「ええ。表向きでは共存なんて謳っていますけど、この国において"VC"は忌むべき"異質"なんですよ。本音をいえば、あの人工島のように全ての"VC"をどこかに囲って、排除したいのでしょう。ですが世界的に人権主義が主体となっている最中、そんな非人道的な策を講じる度胸もない」
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