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「好きにすれば? 死んでるかもだけど」
「ありがとう」
俺は急いで駆け寄り、彼女の脈を確認した。
(…………生きてる)
即座にジャケットを脱ぎ、首元に強くあて、止血を試みる。
ポケットから取り出したスマホで、救急連絡――をするフリをして、本部へと繋いだ。
「すみません! 救急車を一台お願いします。女性が一名、"吸血"被害に合いました。場所は――」
それらしく救急要請を出して通話を切ると、手持ち無沙汰に黙って見ていた彼が「その子、まだ生きてんだ?」と話しかけてきた。
「ああ。気は失っているけど、まだ脈はあるよ」
「ふーん……。なら、俺達の"仲間"になる可能性が高いね」
「……まだ、わからないよ。三時間経ってみないと」
"V-2"による遺伝子変異は、三時間を要する。
即死を逃れたとて、生き残れるかどうかは、時が過ぎるまでわからない。
「それもそうか」
思い出したように首肯した彼に、俺は「良かったら、名前を訊いてももいいかな?」と問うた。
発狂するでも自暴自棄になるでもなく、至って冷静。逃げる様子を見せないどころか、会話を投げかけてきた。
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