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だから、と。俺は自身の胸元へ手を当てた。
「だから、俺がいるんです。吸血行為に及ぶ可能性のある"VC"を見つけ、報告し、"仲間"に監視させる。……危険因子と判断されれば、"吸血"事件を起こす前に"隔離"を行うんです。味方を装った排除者が"マリア"なはずありません。"ユダ"ならわかりますけどね」
黙って聞いていた充希は「ふむ」と顎先に手を遣ってから、伺うような目で俺を見た。
「なによりもまず、そんな裏事情を僕に話してしまって良かったのかい?」
「まずいですね。充希さんが誰かに口外したら、間違いなく俺の首が飛ぶと思います。おそらく、物理的に」
「つまり僕は今、半強制的に巧人の生命線を握らされたわけか。ふふっ、悪い男だねえ、巧人。まるで共犯者を増やす詐欺師のようだ」
充希はちっとも堪えてなさそうな笑みを浮かべ、両手を上げた。
「僕がいま聞いたのは、敬愛なる友人の、初めて心を開いてくれた人生相談だ。おまけに一時的とはいえ"相談屋"の一員でもあるのだから、守秘義務は貫くよ。……そうだね、せっかくの機会だから僕も、"相談屋"らしく応じてみようか」
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