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そう言って充希は机上で両手を組み、三日月眼で俺を真っすぐに見上げた。
「僕の知る範囲では、どこの国も内情は似たようなものさ。ただ、彼らも実行はしない。何故だと思う? 答えは簡単、怖いからさ。単なる"N"が"VC"に勝てるわけがない。猫にだってわかる真理だ。だから彼らは見せかけの好意という仮面を被りながら、あくまで自分たちが強者であるように振舞う。尻尾を哀れに丸めてね。守りたいのは"国"ではない。臆病な自分自身なのだよ」
小馬鹿にしたように鼻を鳴らして、充希は再びカップを手に取った。
音楽一つない静寂。上下した喉に合わせて、嚥下音が小さく届いたような気がした。
――所詮、何処の国も同じ。
やっぱりという気持ちと、失望がない交ぜになったような心地。
何か、決定的な"何か"が起きて、現状が覆されない限り、"VC"に明るい未来など存在しない。
だから、そう。もし姉さんが生きていたとしても、結局は――。
「話を戻そう、巧人」
トンと響いた鈍い音に、沈みかけた思考が切れる。
見れば充希は両肘をカウンターについて、ニッコリと笑みを浮かべた。
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