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「……充希さんも言っての通り、退院したとて、彼らの日常がそのままそっくり戻ってくる訳じゃありません。今回、犯人は既に死亡していますから、彼女自身が加害者となる線は薄い。心配なのは"自殺未遂"あたりなので、慎重に精神面の向上を計りつつ、退院後の生活に備えた準備をサポートする予定です。仕事面や住まい、必要であれば、コミュニティの紹介も」
「ふむ、ならば僕は彼女とより親密な関係を築けばいいのだな。願ってもない」
「……充希さん。あなたの"アモーレ"探しとやらに口出しをする気はありませんが、もう少し状況を弁えてもらえませんか? 今回は"お笑いコンビ"ってことで納得してもらえましたけど、前回のように、相手を刺激することになる場合もありますし」
「うーむ、しかしなあ」
充希は芝居がかった動作で腕を組み、
「あれはただの条件反射ではなく、これまでの経験から選び抜いた最善策なのだよ。相手がうっかり僕の血を望んでしまったら、全てが終いだろう? ならば初めから好意を持っていると伝えたほうが、確率も上がるに違いない。何事も、興味を持ってもらえなければ、次に繋がらないだろう?」
(……一理ある)
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