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須崎は俺に撃たれていても、数時間後には警察病院の薄暗い病室のベッドで、拘束されていた筈だ。回復後は言い訳の余地もなく、"VC"専用の拘置所へ移される。
それがこれまでの"通常"だった。だが、今回は違う。
死んだからだ。彼が。
"吸血"行為を働いた己の罪の重さを知ることも、更生の機会も与えられずに。
「……訊いてもいいですか?」
「勿論、何でもどうぞ」
「あの時……充希さんが噛まれた後に口にしていた薬剤は、やはり血性サプリメントですか?」
「ご名答。だが、ただの血性サプリメントではない。あれはね、私の血を使った特注製さ。知り合いにちょっとばかし変わった研究者がいてね、彼から自分の血をサプリメント化させる機材を借りているんだ。僕はね、他者の血を受け付けないんだよ。だから自分で定期的に輸血用の血液も保管しているし、ああいう"いざという時"の為にサプリメントも常備している」
「……充希さんも、"人"の血を求めないだけで本質は"VC"と同じだと言ってましたよね。あの程度の噛み跡なら、サプリメントで血清を補充しなくとも、三十分もすれば治癒していたんじゃあ」
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