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「その事実を知る一般人は、存在しません。野際さんが言っていたように、須崎は突発的な心臓発作で死んだというのが"事実"です。……例えば、一人目の被害者を"置いて行った"俺を、"見捨てた"と解釈して恨みを向けていても、不思議ではありません」
「巧人のことだ。"無意味"だと判断したから、置いていったのだろう」
「……今回は、そうですけどね。それだって、彼女の生存を願った誰かにとっては、そう簡単には受け入れがたい話でしょう。止血してくれていれば、すぐに病院に運んでくれていれば。万が一にでも、希望が残っていたかもしれない。そう考えるのは、自然だと思います」
「巧人は優しいな。理不尽な矛先も、その身で受け止めてやるとは」
「まさか。そうした感情を知っているというだけで、受け止めているつもりはありませんよ。現に、もし俺の仮定通りの人物が襲ってきたとしたら、俺は迷わず撃退しますし」
ですから、と。俺は強い要望を込めて、充希の双眸を見つめた。
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