ブラックメール

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「勿論さ。そもそも、僕だって好き好んで"ヴァンパイアキラー"になったワケではない。それまでは虫を殺すのも躊躇う、どこにでもいるただの男だったのだから。……巧人にだってわかるだろう。仕方ないのだよ、与えられてしまったのだから。だから僕は"ヴァンパイア"は狩れど、"人"は殺さない。これまでも、これからもだ」  ――つまり充希にとって、"ヴァンパイア"と成り下がった"VC"は、"人"ではないということか。  そう定義づけたのは、充希自身の心を守るためだろうか。  望まずとも、与えられてしまった。押し付けられた俺達は、"許される"時がくるまで、気の狂いそうな地獄の中を生き続けなければならないのだから。 「……俺も、約束します」  俺の抱いたこの感情は、気紛れのような、小さな同情心なのだろう。 「充希さんのことは、俺が守ります」  まっすぐ告げた俺に、充希はにこりと無邪気な笑みを浮かべた。 「巧人がそう誓うのならば、間違いはないな。僕は安心して、バカンスを楽しもう」  バカンス。そうだった。すっかり忘れていたが、充希はこの国にバカンスに来たと言っていた。
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