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「……事務所の休業日でよければ、観光地にでもご案内しますよ。俺がついていける場所に限られてしまいますが」
「それは素晴らしい! 今回はその場凌ぎでのんびりしようと思っていたのだが、あの駅では随分と苦労した。ええと……そうだ、新宿駅。一時はあのまま数年は出られないかと、覚悟を決めたよ」
「それは……大抵の日本人もそうなので、仕方ないと思います」
本当に、充希の目的は"バカンス"なのか。護衛として側に置かれた俺が、しっかり見極めなければならない。
「どこか行きたい所、ありますか?」
尋ねた俺に、充希は「そうだなあ」と逡巡する仕草を挟んでから、「それよりも」とお伺いをたてるようにコテリと首を傾けた。
空のカップを指先で持ち上げる。
「おかわりを頂いてもいいかな? 巧人。今はバカンスの計画よりも、傷心の"バーベナ"をいかに口説き落とすか、相談にのってくれ」
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