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バーベナの決意
八釼との調整の下、許可を得た時間に病室を訪ねると、彼女は待ってましたと言わんばかりに笑顔を咲かせて「来てくれたんですね」と迎え入れてくれた。
まだ安静指示が出ているようで、昨日と同じくベッドの背もたれを上げる形で座っているが、腕からは点滴が外されている。
昨日は乱れていた髪も、片側に寄せて束ねられていた。吸血を受けた首元にはまだ、ガーゼが貼られている。
「今日も手ぶらですみません。警察の方に聞いていたら、まだ駄目だと言われてしまって」
「まったく、この国の"警察"は頭が固い。なあ、巧人」
「……ホントですね」
「そんな、お気遣いなく。来て下さるだけで十分嬉しいです。どうぞ、入ってください」
「それじゃあ、失礼して」
栃内に促され入室した俺達は、部屋の隅に置かれた丸椅子を手にベッド横へ向かい、窓を背にするようにして並べて座った。
「点滴、外れたんですね」
「あ、はい。食事も普通に取れているんですけど、まだ必要最低限しか動いちゃ駄目だって言われていて……」
「DNAレベルで細胞の変化があったんだ。"馴染ませる"には、時間を置くのが一番だからね」
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