バーベナの決意

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「いや」充希はとろりと双眸を緩め、 「笑った顔も実に愛らしいじゃないか。どうだろう? やっぱり僕の"アモーレ"に」 「ふふっ、充希さんは軽薄なキャラっていう設定なんですね。でも確かに、野際さんは雰囲気からしていかにも真面目さんって感じがするから、その方がバランスがいいですね」 「そう! まさにそうなんだよ! 硬いモノ同士がぶつかれば、どちらかが欠ける。だが片方が柔らかければ、受け止めた後に倒れないよう支えてあげられるだろう? 実に合理的で、美しい関係だと思わないか?」  流されたプロポーズ、謎のコンビ論。  いや、ダメだ。ここは突っ込んだら負けだ。  まさか俺を指名したのは、充希が俺を受け止めて? 支える? 為だったのかとか訊きたいことは山ほどあるけど、ここは絶対に触れたら駄目だ。  必死に耐えている合間にも、充希と栃内は和気藹々と言葉を投げ合っている。  微妙に噛み合っていない気もするが、二人が楽しいのならわざわざ水を差す必要もないだろう。充希が余計な話題を口にしないかだけ注意しながら、気配を消して見守る。  話題の中心がどうも俺のようだが、ここは何も言うまい。
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