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「だからね、僕が思うに巧人はいっそのこと、バトラーのように燕尾服を着てみたらいいと思うんだ。そうすれば遠目から見ても巧人だと分かりすいし、初めましての相手には言葉なくとも成りを表す名刺代わりになるだろう?」
「あ、それなら私、紋付き袴も捨てがたいです。野際さん肩幅もしっかりありますし、似合うと思うんですよ」
「ふむ、これは悩みどころだ。そうだ、こうした場合は当人に選んでもらうのが、最善じゃないだろうか?」
「そうですね! 野際さん、燕尾服と紋付き袴、どちらがいいですか?」
置いてけぼりの当人に向けられる、期待の眼差しが二人分。
いや、どちらって言われても……そもそも、どんな状況だ。
否定するにも気が引けて、俺は苦笑交じりに、
「どちらも仕事に支障をきたしそうなので、このままでお願いします」
「バトラーはあの燕尾服で様々な所用をこなすぞ! 何が不満だ!」
「あのですね……俺はバトラーではなくただの相談屋です。だいたい、燕尾服なんて窮屈そうですし、あの後ろのピラピラが邪魔じゃないですか」
「も、紋付き袴は……?」
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