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「栃内さんまで……。袖も草履も、いざって時に動きにくいですし、ちょっと厳しいですね」
いや逆に、何故そのチョイスでいけると思ったんだ二人とも。
残念そうに項垂れる充希と栃内に嘆息して、俺は「仕事といえば」と切り出した。
「会社への連絡ってされていますか? 事情が事情ですし、もしまだのようでしたら、私が代理としてお話しますよ」
穏やかだった栃内の頬が、瞬時に強張った。
「ええ、と」
ぎこちなく宙をさ迷う視線。
「連絡、しました。なので、大丈夫です」
――これは、何かあったな。
いや。そもそも、『大変だったね、待ってるからね』と平穏に済む方が稀だ。
「……"VC"への改変を理由にした不当解雇は、珍しくありません。私もこれまで何度も遭遇してきました。ご存知かとは思いますが、"VC"化を理由にした解雇は法律で禁じられています。そういうことでしたら、直ぐにでも抗議文を持って話し合いに……」
「いえ! 平気です、そういうのじゃなくて」
「なら、罵倒暴言ですか? その場合は精神的被害を訴えに……」
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