バーベナの決意

11/22

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
 彼女は耐えられるだろうか。いや、耐えてくれるのだろうか。全てに絶望し、死を望んだ姉さんとは違って――。  ふと、扉が小さく鳴った。数センチだけ開けられた隙間から、廊下に立っていた警備員――清が顔を覗かせる。 「そろそろ時間です」  それだけ告げて、再び閉じられた扉。 「もうか。つい先ほど来たばかりの気分だ」 「本当に。もうそんなに話していたんですね」 「そうだ、花瓶の水を変えねば。さて、今日は僕が……」 「俺がやりますから、充希さんは大人しくしていてください。栃内さん、すみませんが、この人が余計な事をしないか見ておいてもらえますか」 「ええ、わかりました。ありがとうございます、野際さん。さ、充希さん。もう少し私の話相手になってください」 「僕ばかり役得ですまないね、巧人。店に戻ったら僕がコーヒーを淹れよう」 「……気持ちだけ貰っておきます」  立ち上がり、昨日俺が置いたままの花瓶を手に取って、水場へと向かう。  間仕切り用のカーテンは、今日も空いていた。後方からは充希と栃内の、名残惜しそうな会話が聞こえてくる。  洗面台も綺麗だ。慎重に花を抜き、水を捨てる。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加