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――10年前の今日、僕らの街の神社で謎の小型爆弾が爆発し、周りに住む多くの人の命を奪った。
僕の父さんや母さん、奈留の両親もそれで・・・。
しかもその爆弾はそれだけに留まらず、未だに解明されていない未知のウイルス、通称「カロンウイルス」をばら撒いた。
そのウイルスに感染すると呼吸器系の障害、胃腸系の障害、頭痛、嘔吐と症状は様々だが、いずれ皆死に至る。
そのことが発覚してから政府は僕らの街そのものを「隔離施設」として、他の街との境界線を全て封鎖した。
食料や生活必需品はドローンやロボットが定期的に運んでくれるおかげで不便はないけど、この街に取り残された僕らはいつその命が終わるかを考えずにはいられなかった。
でも僕たちは完全に見捨てられたわけじゃない。
今も政府の偉い機関の人たちがこのウイルスをどうにかできないかと必死に研究している。
きっと僕たちが大人になるまでには――。
「大丈夫だよ、奈留。きっとそのうち科学者が新薬を――」
「・・・うん。そうだね。」
奈留は悲しそうに笑う。
――昨日も僕たちのクラスで死んだ奴が一人出た。
半月くらい前にも別のクラスで一人。
薬が開発されない限り、僕たちの街は徐々に徐々に崩壊していく。
世界から隔絶されたこの街から一生出られないまま。
僕たちは互いに無言で学校を目指した。
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