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「あ、あの俺、奈留ちゃんが好きなんだ!付き合ってくれ!」
屋上に続く階段を上っていると、男の声が聞こえてきた。
やっぱりそういう話か・・・。
「俺さ!将来は医者を目指してるんだ!だから新薬の開発にだっていつか携わって、絶対奈留ちゃんをこの街から出すから!」
すごい奴だ。
僕ならそんなことはとても言ってやれない。
奈留はなんて答えるかな・・・。
「えっと、すごくうれしい・・・ありがとう。」
「な・・・!」
奈留・・・!
ついそう言い出しそうになって慌てて口を押さえた。
「でもごめんね。私、きっとそれまで生きてられないから。」
「え・・・?」
「それに、私には昔から心に決めてる人がいるんだ。死ぬ前に恋をするならその人って決めてるから。」
「・・・わかった。でも俺、新薬のことは諦めないから!いつか絶対きみをこの街から出して見せるから!」
「・・・うん。ありがとう。」
そうしてしばらくすると、男の方が階段を下りてきた。
僕には気付かないほど思いつめたような顔で、目は少しだけ潤んでいた。
「・・・奈留。」
「あ、はるくん。」
屋上に出ると雨が降っていた。
雨に濡れた奈留の髪はとても綺麗だった。
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