背中を押されて

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私は今年26歳になり、1人の友達がいた。 その子が史奈だ。 出会いは中学で、クラスが一緒になったことがきっかけで仲良くなった。 私は昔からあまり人と関わりを持たなかったのだが、出席番号が近かった史奈はよく私に話しかけてきた。 「濱本さん!こっちだよ!」 「濱本さ〜ん!一緒に行こ!」 「陽菜!何読んでるの?」 「陽菜〜!テストどうだった?」 私はずっと「原さん」と呼んでいたのに、彼女はいつからか私のことを「濱本さん」から「陽菜」と呼ぶほど馴れ馴れしくなっていった。 私は元々人に触られるのがあまり好きでは無かったのだが、彼女は特に酷かった。 机で本を読んでいる時に背中をつついてきたり、手を洗っている時に肩を叩いてきたりだ。やめてと言っても中々やめないから苦労している。 特に多かったのが、「背中を押す」行為だ。 帰りの分かれ道でも、私が図書室に行く時もいつも背中を押してくるのだ。「ほら、行って」と言わんばかりに。 彼女の様子を見る限り、理由は特に無いそうだった。 「そこまで言うなら距離を置けばいいんじゃないか」と思うだろうが、私には、史奈しか友達がいなかった。 そんな史奈が先日、 死んだ、らしい。 普段見ないテレビを久しぶりにつけてニュースを見てみると、ニュースに史奈の名前が載っていた。 通り魔に包丁で刺されたらしい。以前から話題になっていた通り魔だだと。 ─嘘だ。そんなはずは無い。 つい昨日も、LINEで他愛のない話をしていた所だ。 そうだ。これはたまたま史奈と名前が一緒なだけ。原という苗字も、史奈と言う名前も、よくある名前だ。 ふと思い立って、史奈にLINEを送ってみることにした。 【おーい】 しばらく経ったが返信がこない。きっと気付かなかったのだろうと思い、ついでにうさぎのスタンプも送ってみた。 1分が経った。いつもは1分足らず、はやければ10秒ほどで返信がくるのに。 そうだ。寝ているのか。よし、家に行こう。久しぶりだから驚くだろう。
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