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「その男はバカですね」
「本当、小学生みたいですよ。それが体は大人だからタチが悪いです」
「ははは、頭の方もですが、それ以前に亜由美様を手に入れられたのにすぐに手放したことです」
竜基さんは私を亜由美様と呼ぶ、はじめは居心地悪かったけど、大人のイケメンに様づけされると疲れも吹っ飛ぶので、今は呼ばれるたびに心でブブゼラを鳴らしている。
「竜基さんにそう言われると、私がいい女に聞こえるから不思議」
「ですから、亜由美様は“いい女”ですよ。笑顔はわたしの大脳皮質を刺激します」
何を言っているのかわからずキョトンとしていると
「まずは、亜由美様の中学時代の話ですが、その男子生徒は亜由美様がお好きだったのだと思います」
「まさか」
「いえ、時に男は残念な生き物になることあります。彼は好きな子をいじめたいタイプなんでしょう。そして、今回は単なるバカです」
そう断言すると竜基さんはカクテルを作り始めしばらくすると私の目の前に赤くキラキラと輝くカクテルを置いた。
一口飲むと甘酸っぱくそしてソーダで口の中がさぱりとして美味しい。
「美味しい」
「カシスソーダです」
「凄く綺麗、ルビーみたい」
「カシスソーダは“あなたは魅力的”と言う意味をもつカクテルです」
カクテルを持ち上げて光に当ててみる。
情熱的で美しいカクテルは私とは縁遠い。
「憧れる」
「人の脳はすごいですよね」
「え?」急に魅力的な話から脳?
「好きだった男子に言われた言葉が呪いとなって、それが亜由美様に暗示をかけてしまった。だから、鏡を見た時に脳が勝手に美しくない自分像に置き換えてしまう。どうでしょう、その呪いを解いて本来の自分になられてみたら?」
「そんなこと・・・できるわけがない」
「どうしてです?亜由美様は変わりたくないですか?」
「変わりたいけど」
「それならわたしと取引をしませんか?」
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