ゆきの悲劇

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ゆきは市内の高校に通う高校3年生だ。現在ゆきが所属しているバレー部は最後のインターハイに向けて猛練習を続けていた。 「今日は部活終わりにけいすけとデートだ♪」けいすけはゆきの彼氏でサッカー部の同級生だ。授業が終わりうきうきしながら部活に向かっていたゆきだったが、 「あっ!!」 なんと階段で足を踏み外してしまったのだ。 「きゃあああぁぁぁぁ」 校舎に悲鳴が響いた。 「うぅぅ...」 階段を踊り場まで転げ落ちたゆきは、なんとか頭を打つことは避けたものの 「うわああぁぁぁ腕があああぁぁ」 悲鳴を聞いて集まった野次馬たちが見たゆきの右腕はひじからバッキリ折れ逆の方に曲がっていた。 すぐに救急車が呼ばれストレッチャーに乗せられた時、ゆきは腕の痛みのために意識が朦朧としていた。 「うぅ...腕...私の腕」 「大丈夫ですよ。今から病院に向かいますからね。」 救急隊員が声をかけるとほっとしたのか、ゆきは意識を失った。 目が覚めると白い天井が見えた。 体を起こそうとすると、 「うぐぁ.......ぁぁ」 右腕に激痛が走った。 (そっか私階段から落ちて右腕を...) 「ゆきっ!」 「あ...けいすけ...!」 ここで初めて心配そうにゆきの顔を覗き込んでいるけいすけに気づいた。 「よかった...先生呼んでくるよ」 「あ...うん...」 しばらくして白衣を着た女医さんがやってきた。 「小山ゆきさんね。」 「はい...」 「知ってると思うけど、あなたは階段から落ちて右腕に重傷を負ったのよ。ここまでいい?」 「はい。だいじょぶです。」 「まずあなたの右腕は、尺骨が単純骨折。上腕骨も折れてるわ、バッキリね。とりあえず包帯とシーネで固定してあるから安静にね」 「そんな...でも私」 「話はまだ途中よ。いちばん酷いのは肘。靭帯が片方が切れちゃってる。手術が必要になるわ。」 「そんなぁ...で、でも私来週インターハイなんです。最後の...。」 「無理ね。あきらめなさい。」 「じゃ、じゃあせめて観戦に行くぐらいはいいですよね?」 「手術があるのよ。2週間は入院ね。」 「そ、そんなぁぁあ...」 「では、安静にね。」 そう言って女医は出ていってしまった。 「うぅ...高校最後の大会なのに...。」 ゆきは泣き出してしまった。 「ゆき、辛いけどまずは治療に専念しよう?な?」 「うん...」 「俺もなるべく来るようにするから。がんばろうな」 「ありがとう...」 その後病室を出たけいすけの口には不気味な笑みが浮かんでいた。 1週間後 ゆきは無事手術を終え、仲良くなった先生と雑談していた。ゆきの腕には何本もボルトやプレートがいれられ付け根から指先までギプスで固定されていた。 「ゆきさん、あなたの腕は順調に治療が進んでいるわ。このままだと明後日にでも退院できるけどどうする?」女医のまゆ先生が尋ねる。もちろんゆきは、大喜びだ。 「ありがとう先生!最初は怖いと思ってたけど案外優しいのね。」 「案外ってなによ!」 そう言って2人がふざけあっていると病室の扉が開いてけいすけが入ってきた。 「ゆき、腕は大丈夫か?」 「あ、けいすけ!うん平気。それにね、明後日にでも退院できるんだって!」 「おー!それはよかった。」 ふふふとゆきは嬉しそうに笑った。
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