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111. 恭子編 5
5-2.☑
「あぁ、悪いっ!
俺ちょっと今日はどうしてもこれから社に戻らないと・・・」
新聞記者の垣本はこれまでの飲み会でも時々こういう
ことはあった。
飲み会発足後に、仕事柄こういうことがあることは彼か
ら聞いていたし、実際今までもあり、私と森田さんは社に
戻って行く彼を労いつつ見送った。
「恭子ちゃんとふたりっきりで飲むっていうの初めてじゃない?
もしかして」
「うん、初めてだね」
「何か俺に言いたいことあるんじゃない? 」
「ないって言ったら嘘になるかなぁ~」
私は自分のグラスを手に取り視線はグラスに向けたまま
意味深に言ってみた。
「白鳥さんとのことは・・」
付き合ってた頃は彼女のことを多恵ちゃんと呼んでいたの
に、今は他人行儀な白鳥さんと称する森田さんに、冷たいな
ぁ~と心の中で突っ込みを入れた。
そしてそれが今の彼の心情の現れなのだと知る。
「彼女とのことは遊びだった? ・・ってことはないよね? 」
「それは、誓ってないっ。
結構真剣だった、って言っても今更かぁ~。
恭子ちゃん、信じないよな? 」
「どうだろ? 分かんない。
だって本気で付き合ってたのに、二股ってどういうこと
なのかなぁ~とかって疑問が出て来るし」
「そっか、やっぱり俺は二股してたことになってるんだ。
やっぱり信じてはもらえないかー、参ったな」
「白鳥さんに元カノは泊まってなかった、ってちゃんと
言い訳したの? 」
「してない」
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