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109. 恭子編 3
3.☑
「白鳥さん、どうしたの? 時間間違ってるよ」
そういう森田の言い方は迷惑そうに聞こえた。
「間違ったんじゃなくて、出掛ける前に少しお茶でもして
まったりできたらと思って、早く来ちゃったんだけど。
他の人と一緒だなんて思わなかったから、ごめんなさい。
こちら、お姉さん? 」
「姉じゃないんだけど・・まぁその、親戚の子」
「白鳥さんってもしかして、将生が今付き合ってる人? 」
「そう・・デス」
「私は嘘は嫌いだから。私は北乃桃子って言います。
一応将生の彼女です」
「何言ってるんだよ、元が付くだろ? 元カノだろ。
勘違いするようなこと言うなって」
「アレ? 昨夜お泊りした私って元カノなの?
この二股野郎。いいわよ、ほんとに元カノになってやろ
うじゃないの。
っていうことで、白鳥さん二股野郎お譲りします」
そう言うや否や、北乃は奥の部屋から上着やらバッグを
取りに戻り、『お邪魔虫は消えるわね』と言い残し、出て行った。
一歩も動かずの廊下に突っ立ったままの森田と玄関先で佇む多恵子。
しばらくの沈黙。
彼からは謝罪も言い訳もない。
「そういうこと? 分かったわ。
これで私たち、終わりね。おじゃましました、さよなら」
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