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おわりに
百人一首についての本は、専門書から漫画に至るまで、一般書・児童書を問わず、かなりの種類が出版されています。
中でも、私の好きな百人一首本ベスト3の一冊は、橋本治『桃尻語訳 百人一首』です。
(*この本は、形を変えて3回、以下のように出版されています。
①大型本『桃尻語訳 百人一首』4-7593-0789-3(2003年刊)
解説に加え、美麗な木版画と味のある切り絵の2種の札が楽しめます。
②新装版『桃尻語訳 百人一首』978-4759310931(2009年刊)
A5サイズのコンパクトサイズで、切り絵のみの札になりました。
③『百人一首がよくわかる』978-4062200103(2016年刊)
出版社が講談社に変わり、解説のみ札なしですが、読みやすいです。)
ほとんどの百人一首本は、和歌を一首ずつ取り上げて解説する形式なのですが、橋本治さんは、隣り合う二首をペアで捉えるような感じで解説しています。
定家は、女性の情熱的な恋の歌の後には、男性のしょぼくれた歌を選ぶことが多いんだよね、とか。
ただ、どうしてこの歌とこの歌がペアなのか(隣りあっているのか)ということが書かれていないことが多いので、今回は自分で書いてみるにあたって、調べて考えてみて「こういうペアではないかな?」と思ったことを綴ってみました…ので、ペアの解釈が間違っているかもしれませんが、その時はどうぞご容赦ください。
さて、鎌倉殿ではない話題になってしまうのですが、2022年の今年は、少女漫画『ちはやふる』(全50巻)が完結した年でもありました。
高校生の、競技カルタの青春モノです。
主人公のちはや(女子)と、ちはやを好きな二人(男子)という、1女子2男子の、黄金のトライアングル関係が描かれるのですが、果たして最後に、ちはやはどちらの男子を選ぶのか!?というところで、私は「えっ…彼なんだ!?」と、ちょっとびっくりしました。
でも、これって、百人一首の配置(隣り合っている札)が大きなポイントになっているのです。
ちはやにとっては、自分の名前が詠みこまれている歌
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
が特別な札なのですが、彼女が、ようやく好きだと自覚したのは、17番のちはやの歌に隣り合った札の人…という趣向になっていました。
百人一首は、障子(襖)に飾るため、2枚のペアで並べられることを念頭に定家は選歌したので、二首をセットで味わうと、物語のような広がりが生まれたり、意味に深みが増したりします。
ハンドルネーム「たられば」さんという、平安朝文学に詳しい編集さんが、
「ひとつの歌だけを見たときの解釈と、ふたつ並んだときとで、微妙に解釈が変わるんです。応答してるみたいな感じになる」
とおっしゃっていたのですが、本当にその通りだと思います。
また、百人一首は謎解きのように、暗号だの魔法陣だので解釈されたり、いろんな読み方ができるのも魅力の一つでしょうか。
私も鎌倉殿をきっかけに、ペアで読む百人一首の面白さに目覚めたので、紫式部の生涯をテーマにした再来年2024年の大河ドラマ放送の際には、懲りずに『百人一首と光る君と、』を書いてしまうかもしれません…その時まだエブリスタを続けていれば、ですが…なんにせよ、鬼が笑ってしまいますね。
それでは、百人一首のマイナーな話に最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました!
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