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波乱の一日目
『何これ。俺が使って良いの?』
男の子はそう言って、左隣を見上げた。
真っ黒なスーツを纏い、長身。黒髪をオールバックで後ろに流し、首筋に大きな入れ墨が入った男は、自身を見上げるまだ幼げな男の子の頭に手を置き、それはそれは優しく微笑む。
『良いぞ、お前の好きなように使え』
私の後ろには二人の男が居て、拘束はされていないもののカチャリと嫌な音が耳を掠めた。
…逃げ出せない。
逃げたって、何にもならない。
私にはこうする事しか出来なくて、生きるためには、守るためには、これ以外の選択が無かった。
男の子は足を進める。
決して綺麗とは言えないけど、年相応の幼い顔。クラスに居たって違和感を感じない、ごく普通の、何処にでも居そうな男の子。
在り来たりな中学の制服を纏って、私の目の前まで歩いてきたと思ったら、胸元まで伸びた私の横髪を鷲掴みにしてグイッと前に引っ張った。
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