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スプーンを持ったままの手に顎を乗せて、
頬杖を付く愁。
人の目を見る時に首を傾げるのは愁の癖で、角度が付いた視線は、目を合わせるのが少し怖いくらいに時折私を惑わせる。
声も。初めて会った時から思ってたけど、低過ぎず、かといって高いわけでもない声には柔らかさがあって、落ち着いた口調に気付いたら引き込まれてしまう。
愁は良く分からない。
どこまで信じて良いか分からない。
第一印象は最悪だったのに、
こうして目の前に居る今は優しくて。
「今日だけは俺の言う事聞いて。それ食べたらちゃんと薬飲んで、ゆっくり休んで。お風呂の時は俺が洗ってあげるから」
「そこまでし‥」
……
……ん?
ん?
口に運んだスプーンを咥え、止まる。
カチャリと聞こえる音に愁は普通に炒飯を口に運んでいるようだけど、…待って。今この人、なんて言った?
愁を見る。
やっぱり普通にスプーンを口に運んでいて、目が合えばふっと口角が上がるけど違う。今求めてるのは、ほわっとしてしまう笑顔じゃない。
「今、なんて言いました?」
「何が?」
「何が、じゃなくて。お風呂の後なんて言いました?」
「聞こえなかった?ハルヒ腕痛いし絶対安静だから、自分じゃ洗えないでしょ。今日は俺が手伝うから」
「いりませんっ!!!」
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