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パンツ一枚の哀れな姿でも気にする事無く、ハルちんを抱き抱えて部屋に戻っていく伊澄の傍らで、
俺は外に出てきたライオンとマングースに両手を挙げて、湯の中に下半身を沈める。
「マジ怖いって。なになに?」
「あ?」
…千冬、浴衣の裾に何かの血が付着してるし。
鋭い目で貫かれれば、元気だった俺の下も萎む。
千冬の隣に立つ愁は、いつもは怒った時でもニコニコしてる癖に今は全く笑ってない。
甘い二重瞼を静かに落として、両腕を絡めたままその場にしゃがむと、目線の高さに居る俺と視線を合わせた。
そこで漸く口だけ笑う。
「お疲れ、蓮。疲れたでしょ?」
長かったもんね、と言葉を付け加えて首を傾げる様は、星が散りばめられた幻想的な景色を背景にする俺には滅茶苦茶な景色。
「…愁ちん怖い」
「火と水、どっちにする?」
「ん?」
「火炙りの刑か、水攻めの刑。俺等優しいから選ばせてあげるよ。どっちにする?」
「…えぇー」
―――
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