温泉旅行3

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【第三者目線】 深夜の人生ゲームが始まった。 全く楽しそうじゃない四人の男が長テーブルの左右に二人ずつ並んで、お互いが少しずつ距離を空けて座っている。 見るからに怪訝な顔で頬杖を付いた千冬。 棒人形が乗ったカートを、指で転がす伊澄。 ルーレットをくるくると回転させる愁。 殴られた右頬に氷袋を当てて、苦笑いを溢す蓮。 カオスな状況の中、隣にハルヒが寝ている以上、誰もこの部屋を出て行く気は無くて。ブスブスとカートに棒人形を差し込む伊澄を愁が笑う。 「人乗せすぎじゃない?」 「助手席はハルだから。後ろは子供」 「……」 やっとで少し和みそうになった空気も、 ものの数秒で凍り付く。 助手席のピンク棒人形の頭を、人差し指でするすると撫でる伊澄。 もう人が乗り切れないカートの隙間に棒人形を差し込む新たな遊びを始める伊澄に、痛そうに頬を歪めて蓮が笑う。 「交通ルール完全無視じゃん」 「あ?」 「…怖いよ。そんな目で見ないでよ。雰囲気悪いよいずみん」 「お前さ、アイツに何か飲ませた?」 千冬の声に、顔の角度を変える蓮。 「俺はなぁんもしてないよ。ビール飲んじゃったんだって。殴られる前に一悶着あったんだろうね」
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