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シャリっと、氷袋が鳴る。
切れた口端を舌で舐めて、両手をテーブルに付き伸びをする蓮が余裕の雰囲気で色気を出すから、この場に居る三人は余計苛立ちを募らせた。
くるくるっとルーレットが回る音が響く。
テレビはついて無く、周りの音も遮断されて。「4だ」とカートを進める愁の浴衣の裾がテーブルを滑り、傷一つ無い指が駒を止める。
「公務員に就職。お祝いで一万円貰う」
一応、ゲームはやるらしい。
各々に玩具のお札をまさぐり愁の手元に投げる絵面はかなりシュールで、受け取った愁は「どーも」と。
「次は千冬?」
ルーレットが回る。
…というか遊び慣れてないせいもあって回すのが下手。ゴンゴンッと鈍い音を立てて回ったルーレットは直ぐに止まって。
出た数字を読み上げる事無くカートが進み、
止まったマスに目を細める。
「街中でスカウトされる。三万円貰う」
代わりに読み上げたのは愁。
「スカウトって、」
蓮がふっと笑って、お金を差し出した。
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