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「アイドルにでもなんの?千冬」
「似合わな」
「…まぁ、悪くねぇかもな」
「なんで?」
「女は好きだろ、そういうの」
崩れるように頬杖を付いた千冬が珍しくとろんと瞼を落とし、カートを指先で回す。その頬が緩んでいて、原因がハルヒにある事をなんと無く全員が察するから、また空気が冷える。
「伊澄、回しなよ」
愁の口調もキツくなる。
するするとルーレットが回って、出た1の数字に、既に大量に人が乗ったカートは棒人形を落とさないよう慎重に進められる。
「ただの就職、ただの五千円」
「んな書き方してない」
「伊澄はハルヒが好きなの?」
「…は?」
「ちゃんと聞いた事無かったから。一番最初に気にしてたのは伊澄でしょ。手を出したのは千冬だけど」
全てを把握している愁に、
傍らで呑気に腕を伸ばしてルーレットを回す蓮。
出た数字の目にカートが進む間も、愁と伊澄は向かい合ったまま。無表情ながら冷たい目を向ける伊澄と、冷ややかな顔で口元だけ緩めた愁。
「愁に言う必要ある?」
「あるんじゃない?」
「好きでもハルに言う。お前に言ったら言葉が汚れる」
「ひどっ」
「俺は好きだけど」
「…千冬には聞いてないよ」
「俺も好きだよ。強いし可愛いし健気だし、勢い余ってプロポーズしちゃったよ。あ、会社を起業して大成功。八万円貰うだって」
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