温泉旅行3

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「アイドルにでもなんの?千冬」 「似合わな」 「…まぁ、悪くねぇかもな」 「なんで?」 「女は好きだろ、そういうの」 崩れるように頬杖を付いた千冬が珍しくとろんと瞼を落とし、カートを指先で回す。その頬が緩んでいて、原因がハルヒにある事をなんと無く全員が察するから、また空気が冷える。 「伊澄、回しなよ」 愁の口調もキツくなる。 するするとルーレットが回って、出た1の数字に、既に大量に人が乗ったカートは棒人形を落とさないよう慎重に進められる。 「ただの就職、ただの五千円」 「んな書き方してない」 「伊澄はハルヒが好きなの?」 「…は?」 「ちゃんと聞いた事無かったから。一番最初に気にしてたのは伊澄でしょ。手を出したのは千冬だけど」 全てを把握している愁に、 傍らで呑気に腕を伸ばしてルーレットを回す蓮。 出た数字の目にカートが進む間も、愁と伊澄は向かい合ったまま。無表情ながら冷たい目を向ける伊澄と、冷ややかな顔で口元だけ緩めた愁。 「愁に言う必要ある?」 「あるんじゃない?」 「好きでもハルに言う。お前に言ったら言葉が汚れる」 「ひどっ」   「俺は好きだけど」 「…千冬には聞いてないよ」 「俺も好きだよ。強いし可愛いし健気だし、勢い余ってプロポーズしちゃったよ。あ、会社を起業して大成功。八万円貰うだって」
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