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ビックリする程声が低くて、恐る恐る顔を上げる。
上げたらボタボタと両目から涙を流す花音が居て、焦り過ぎて変な顔になった。
「いやっ、ホントごめんなさいっ!!!」
「ハルちゃん蓮とヤったのっ?なんでぇ~っ」
「あの、私が酔ったせいで…」
「蓮さいてぇ~っ、ばかぁぁぁーーっっアホーーーっ」
「違っ、私が…」
「ねぇー、マジ最低だよねぇー」
急に野太い声が聞こえて、そこを見る。
いつ入ってきたのか、
千冬が襖に肩を預けこっちを見ていた。
胸元で交差した左手を肩に乗せて、頭を後ろに傾げている。黒髪の下で見え隠れする二重瞼が、真っ直ぐ此処に向けられている。
「まじ最低だよねぇー」
「…なんでオカマな喋り方してるんですか」
「人のモンに手ぇ出すとか」
人のモン…?
「物事は順序が大事だと思わねぇ?」
……
それだけは、
それだけは千冬が出すべき言葉じゃない。
スリッパを雑に脱ぎ座敷に上がった千冬は、右の袖口に左手を突っ込み、優雅にこっちへ歩いてくる。
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