温泉旅行3

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千冬とそこまで接点が無いと言っていた花音は、 千冬のいきなりの登場に驚いていて。 奴は目の前まで来ると、テーブルの向かいに腰を下ろし、頬杖をついて私を覗いた。 はらりと右袖がテーブルに落ちて、程好く筋肉質な腕が覗く。骨格が浮き出た手首に脱力した二重瞼が、正面から私を見てゆるりと口角を上げた。 「浮気者」 浮気者って、 「…え。ハルちゃん千冬って付き合ってるの?」 「ませんよ。勘違いですよ花音」 何を言ってくれてるんだ、と千冬を見る。今のこの状況(泣いてる花音を宥める私)が見えてないのか。そう念を送るのに、正面の千冬は気にも止めてない顔をして。 「いずれそうなる」 ちょっ、 「なりませんよ」 「なる」 「なりませんって」 「なってよ」 「……」 「俺のになってよ、ハルちゃん」 寝起きだからかふわふわした口調で、急に柔らかく言葉を変えて。ずるっと肘をテーブルに滑らせた千冬は、そこに崩れる。 二重瞼の奥の瞳が、私に向く。
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