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「社長」
「……」
「せんせ(先生)」
「……」
「あとは、旦那さん?」
言って、顔が私に向いた。
言ってる事はふわふわしてるのにその目が力強く私を見るから、咄嗟に身体を引いた私は口を絞る。
私と同じく、
千冬も襟元から覗かせた首筋を鳴らして、
「ハルちゃんが嫁さん?」
「……」
鼻血が出そうになって鼻を覆った。出ないけど。
言った後に千冬がふっと頬を綻ばせて笑うから、ずるっと崩した片腕に右頬を寄せるから、どんどん表情が引いていく。
…この人、なに?
酔ってんの?ニコチン中毒?毒盛られた‥?
助けを求めたくて花音に振り返る。
「かの、」
ずっと黙っていると思ったその子は、目元に影を落とし無表情のまま持った手櫛をふるふると震わせていていて。こっちはこっちで、何かが駄目だと悟る。
「…千冬は、だめ」
「え、」
声を溢した私と一緒に、突っ伏したまま目元だけ上げた千冬の鋭い目も花音を捕らえて。
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