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ぐりぐりと胸元を押して、
踏ん張った足で、必死に背の方へ身体を引く。
だからって男の力に敵う筈もなく、するすると唇の平を弄ぶ舌が、離れたと思ったら私の瞼にキスを落とした。
「ッッー!!」
咄嗟に目を閉じて、
蓮の顔が離れたのを確認して、恐る恐る目を開く。
パニックの頭で考えられる事なんて何も無い。何も出来ない私の耳に顔が寄って、「冗談抜きのマジだから」と。
いつもの口調に本気を乗せた声が吹き込まれ。
するっと衣が擦れ、身体が離れる。
「間一髪」
蓮が言葉を落としたと同時に、部屋の扉が開いた。振り返った私を見て、伊澄がどっと空気を冷やす。
「こんな所で何してんの?」
「なぁんも。ハルちんと話してただけ」
「……。ハル、大丈夫?」
「大丈夫、です。部屋の片付けしますね、」
座敷に上がる時、傍らから投げ込まれる伊澄のバッグ。
慌てて机に散らばった人生ゲームを片付ける私の傍らに膝を付き、伊澄も片付けを手伝ってくれる。
…めっちゃ棒人形が刺されたカートが一台。
‥なんだこれ。どれだけ"おめでた"に止まったら、こんな事になるんだ‥。
串刺しになったそれを、手のひらに乗せる。
「どうしたの?」
「…凄い人が乗ったの見つけた」
「それハルだよ」
「……え、」
「運転席は俺。後ろは子供。理想は六人」
「……え?」
「俺の理想」
もう、意味が分からない…
―――
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