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変わらないもの/変えたいもの
帰りも二時間、窓の外を流れる景色を眺めて、ここ最近で見知った風景へと戻ってくる。
「ハルちゃんは家(実家)じゃなくて良かったの?」
「父は今日仕事なので」
「せっかくお土産買ったのにね」
「直ぐに腐るものじゃないし、週末に帰ったとき渡します」
「明日は学校だしねぇー」
「花音の荷物はこれだけで良かったですか?」
「うん!ありがとおっ」
「…蓮の荷物はこれで」
「どーも。あ、それはハルちん」
「え?」
手元に小さな紙袋が残る。
「じゃあまた。今日の事、考えといてね」
キャップの下に潜った手が、私の髪をするりと撫でて、蓮の手が離れる。大きすぎないバッグを担ぐように肩から下げて、長身の蓮の背中が離れて行く。
「今日の事って何?」
…今度は千冬。
荷物を引っ張って、千冬に渡す。
「特に。なんでもない話です」
「なんでもないっつー顔してねぇんだけどな」
開いた車のバックドア。下の縁に片手を乗せた千冬と目が合って、この目はやっぱり苦手だなぁ…と。苦手なのに、目が離せなくて不思議だ。
顰めっ面で目を合わせていたら、目を逸らした千冬にふっと笑われた。
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