399人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は帰るわ。じゃあな、」
含んだ言い方でわざとらしく言葉を和らげた千冬は、私から鞄を受け取って離れて行く。
数歩進んで足を止め、振り返る。
黒髪の下から半分覗かせた顔が、瞳が、
「また明日」
すっと上がった口元が。
ムカつくけどやっぱりカッコ良くて、目が止まる。
「ハルヒー、行くよ」
「…はい」
家が反対方向の蓮、花音、千冬は先に降りて。家まで送ってくれると言った伊澄も、今日は夕方から外せない用事があるらしく榊さんに止められた。
榊さんを睨む伊澄に、
逆に私は榊さんに目を細められて。
苦笑いを溢すしか出来ない。
最近、愛想笑いばかりしてる気がする…。
「気を付けて帰ってね」
「伊澄も。榊さんもお気を付けて」
「ありがとうございます」
「愁に何かされそうになったら思いっきり蹴りなよ」
「いずみー、何言ってんの」
「思いっきり。潰す勢いで良いから」
そんなマジ顔で言われても…
苦笑いを溢す愁を見て、伊澄を見れば冷たい顔。温度の違いに笑いが溢れる。
最初のコメントを投稿しよう!