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「食えねぇ事はねぇけど」
「だったら食べて下さい。栄養がありますよ」
「栄養、そうだな」
くつっと笑って指で摘まんだトマトを翳し、
私に振り返る。
そんな千冬を見返す私に、何故かベッドに身を乗り出した千冬は、摘まんだそれを私の唇に押し当てた。
ちょっ、
慌てて腕を押すけど力に敵わず、プチトマトを唇にぎゅっと押されて、危うく弾けそうになる。
ベッドの上だし慌てて口を開いてトマトを受け入れれば、それと一緒に千冬の指も入り込んで、口内でプチっとトマトが弾けた。
「ッッー!??」
甘酸っぱい味と、舌を撫でる指先。
弾けたトマトの汁で濡れた指を千冬は自身の舌で拭って、満足気に笑みを漏らす。
「栄養あるからお裾分け」
「一人でっ、食べて下さい!!!」
「ちょっとは体調良くなった?」
「ッッー」
「栄養摂って早く元気になってね、ハルちゃん」
ふわふわして読めないこの男は、
ムカつく程綺麗に、妖艶に笑う。
―――
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