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にしても、
「……」
不機嫌さを露にしたまま、
するりとピアスに触れる伊澄を見上げる。
緩く着崩した制服。
何事にも無頓着なのに、お洒落には気を抜かない所。
"お洒落に気を抜かない"、というより、
"伊澄"の空気がそうさせてるのか。
チャラチャラしてる訳じゃ無いのに、無造作に癖付いたアッシュブラウンの髪も、綺麗な襟足も。襟元の崩し方、ピアス、袖の折り方一つにすら、つい目を止めてしまうモノがある。
グラウンドを走り回る生徒に、
「元気な野猿」
涼しい顔して毒吐く伊澄に苦笑いが溢れた。
…失礼ですよ、伊澄君。
にしても、伊澄が学校で娯部の部屋意外に居る事が珍しい。
それくらい、普段はあの部屋から出てこないのに。
何の隔たりも無く外日に照らされたアッシュブラウンの髪が、まだ冷たい朝風にさらりと揺れる。前髪が流れ、綺麗なアーモンドアイが露になる。
冷たい空気に誰もが目を逸らす伊澄も、ちゃんと見れば柔らかい雰囲気を纏っていて。
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