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『本当に冷たい人は、こんなに綺麗な瞳はしてないんだけどな』…、口は頗る悪いけど。
「ハルは走んないの?」と言われて、右足を見下ろした。さっき砂で滑って、ちょっとだけ膝を擦りむいたんだよね。
大した事は無いんだけど女の子達に休んで!!と凄い剣幕で言われて、今は此処に追いやられている。…って過程を言ったら、また何かと面倒そうだから口を噤んだ。
時間もあまり残ってないし、今日はここまでかな。運動祭までもう時間が無いし、怪我してクラスに迷惑を掛ける事は一番避けたい。
「もう戻る所だったから」
「そうなんだ」
ごそっと、肩から下げた鞄を探る伊澄。
目の前にウイダーゼリーを差し出される。
「あげる」
「…え?」
「ろくなもん食べてないんだから力出ないでしょ。ぶっ倒れたら大変だし、ちゃんと栄養は取んなよ」
「…今日はろくに動いてないんだけどね」
「良いから。時間が空いた時に飲めば良いじゃん」
「でも、」
「飲まないなら捨てるけど」
「貰います。ありがとう」
一口も手を付けてないのに、
マジで捨てる気だったこの人。
受け取って、まだ冷たく冷えているそれを両手のひらに収める。気持ち良い。手の中だけ温度が下がる。
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