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騒がしくなったグラウンドに目を向ければ、気付けばクラスメートの子達が解散を始めていた。
練習は終わりみたいだ。
私を見て「ハルくぅー」と手を振ろうとした女の子達が、隣に立つ伊澄を見つけ一瞬で表情を強張らせる。それ以上何も言わず、遠慮がちに手を振り、苦笑いを溢して走り去って行く。
人気が散った外の空気。
さらりと風が流れて。
「…気付けば良いのに」
「何が?」
ポツリと呟いた声が、風と共に伊澄に拾われた。
相変わらず何を考えているか分からない二重瞼を見上げる。女の子達の冷たい反応を気にする素振りを見せない伊澄に、つい笑いが溢れた。
「伊澄は気にしてないみたいだけど、ああいう態度は私が面白くないなぁと思っただけ」
「……」
「伊澄は優しいし、気が利くし、口が悪くて分かりずらいのが枷になってるけど、それも伊澄だし。悪い印象が少しでも無くなれば私は嬉しいけど」
「そんな事、俺はどうでも良い」
「だよね」
伊澄はそうだろうね、と、またくつりと笑いが溢れた。
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