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平沢副社長と真澄の見合いの日まで後三日と迫っていた。
私が社屋のビルを出ると『花京院さん!』と低い男性の声が耳に入った。
振り返ると奥中さんが立っていた。
「花京院さん。お時間ありますか?」
「え、あ」
「ダメですか?」
「いえ、大丈夫です」
「ではこちらに」
彼は私を黒塗りの車に案内して、後部座席のドアを開けた。
乗り込むと隣には平沢副社長が乗っていた。
二年振りに見る彼。
彼は何も言わず、私が乗るのを待っていた。
サラサラの黒髪に漆黒の切れ長の目。
通った鼻筋に形の整った唇。
彼のスタイルに合わせた紺のオーダーメイドスーツ姿。
以前の彼と比べ、歳を重ねて分、男の艶も増していた。
「閉めますよ」
奥中さんは扉を閉めて、運転席へと乗り込む。
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