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俺と香澄が結婚して三ヵ月が過ぎた。
『平沢商事』本社・社長室。
「来週の日曜日は親父の二十三回忌だな…」
祖父が亡くなり、既に二十三年の月日が流れていた。
「侑吾…実はな…」
父さんが急に真剣な面持ちで俺を見て切り出した。
「母さんに認知症の症状が出始めているんだ…」
「えっ?」
お婆様が認知症!?
「本人に自覚はないようだが…」
「そっか…」
お婆様のもう八十過ぎの後期高齢者。
認知症を発症してもおかしくはない年齢だ。
「…これからの事を考えて…そろそろ…この私が平沢家の当主を継ごうと思う」
本来なら、父が継ぐはずだった当主の座。
しかし、当時…会社が倒産の危機に瀕して、その上父の仕事は激務で当主の役目をこなす事ができなかった。
父の事を考え、お婆様が当主を継いだ。
「今度の父の二十三回忌の時に母さんにその件を話そうと思う」
「分かった」
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