見合い当日

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『ヘブンズホテル東京ベイサイド』 二人の見合い場所はインバウンド向けに造設させた日本庭園内にある老舗料亭『吉兆庵』の座敷。 「お腹が苦しいわ。お母様」 「我慢なさい。真澄」 着慣れない振袖に身を包んだ真澄はきつめに巻いた帯でお腹が苦しいらしい。 「だって、お母様…」 私も真澄の差し金で見合いの席に強制参加。 私は別の意味で彼と顔を会わせ辛かった。 襖を開けて、平沢社長とご子息の副社長が入って来た。 私達は全員で平沢親子に一礼した。 彼は私の姿を見て驚いていた。 「遅れてすまないな…花京院さん」 「いえ、私達も今来た所です」 座卓を囲み、見合いは始まる。 「妻の園子に、娘の真澄です。そして亡くなった前妻の娘の香澄です」 「花京院さんの令嬢はお二人居たんですか…」 「はい…」 季節の懐石を頂きながら副社長と真澄は話をした。 「倅にもそろそろ伴侶と考えていました。花京院家は旧華族の名家中の名家。 平沢家にはない名家の血を継いでいる」 「平沢商事の名前は世界中に知れ渡っているではありませんか…」 酒が進み、二人はほろ酔いで上機嫌になった。
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