出逢った場所で

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「見合い話は破談にしたんでしょ?平沢副社長。なら、もう私の前に姿は見せない下さい」 「・・・そうだな。仕事中に申し訳ない」 「副社長…」 奥中さんは私達の様子を心配そうに見ていた。 「花京院さん…」 「奥中、帰ろうか…」 「副社長…いいんですか?」 「いいんだ」 「私はこれで失礼します」 私は彼らをおいて、人ごみに紛れながらブースに戻っていく。 あんな風に親身になってくれた人は彼が初めてかもしれない。 私の知る彼は「ビジネスサイボーグ」なんかじゃない。 心優しい紳士だ。 彼に掴まれた右手首が今も熱い。
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