見合い話

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早く部屋に帰りたい。私は来た早々からそればかりを考えていた。 久しぶりに家族四人揃い、ダイニングルームで昼食を頂く。 長年食べ慣れた花京院家専属の村上シェフの見事なフレンチコース。 でも、この三人と頂く料理はどれも美味しいとは思えなかった。 「真澄、『平沢商事』の御曹司から見合い話を頂いた」 「お父様、それは本当ですか?私、嬉しいですわ」 真澄は大喜びする。 「彼の秘書の奥中さんが私を推薦してくれたのね」 「真澄は何処に嫁いでも粗相がないように私がしっかりと養育しました。何処に言っても大丈夫よ。真澄」 「はい、お母様」 「わしも平沢家と親戚なれるとは嬉しいぞ」 「・・・」 三人で喜びを分かち合う。 私は何も言わず、ナイフで切り分けた牛フィレを切り分けて、口に運ぶ。 彼が見合い相手に選んだのは私ではなく、真澄だった。 私は真澄のように綺麗じゃない。 眼鏡を掛け、顔も地味な顔立ちで大人しい性格。 真澄のように社交性はなく、友人も少ない。 真澄を青い空に輝く太陽と例えるなら、私は深い闇の空に浮かぶ月かもしれない。 真澄を見ているとどんどんと自分が卑屈になっていく。
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