初めての反故~侑吾side~

2/8
前へ
/157ページ
次へ
幼い時はあんなに大きく見えていたお婆様。 俺が成長するのに従い、段々とお婆様の姿が小さく見えるようになった。 でも、俺の心の中では今もお婆様の存在は大きかった。 お婆様は香澄と二人で何を話している? 俺は応接間から追い出され、廊下に立ち、話が終わるのを待っていた。 「侑吾様」 「村上さん…」 俺の身の周りの世話をしてくれたお手伝いの村上品子(ムラカミシナコ)さんが俺に話し掛けて来た。 当時は三十五歳だった村上さんと六十近くになるかもしれない。 歳を重ねても、彼女の優しい眼差しは変わってなかった。 「お連れの花京院家のご令嬢様は?」 「あ…今お婆様と二人で話をしている」 「・・・侑吾様もようやくご結婚されるのですね…」 村上さんは俺と香澄の結婚を心から祝福して、目に涙を浮かべた。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

787人が本棚に入れています
本棚に追加